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田原総一朗×水道橋博士 特別対談(後編)インターネットをうまく使えば、テレビ番組はもっと見られるようになる

テレビとインターネットの関係を考える田原総一朗さんと水道橋博士の特別対談の後編をお届けします。ソーシャルメディアが普及したことでインターネット上にたくさんのテレビ番組についての感想や批評を記す人たちが出てきました。しかしインターネット上でテレビ番組を引用することはなかなか難しいのが現状です。テレビ番組の引用とはどうあるべきか。そしてテレビ番組の次のチャンスはどこにあるのか。一緒に考えて行きましょう。

田原総一朗×水道橋博士 特別対談(後編) インターネットをうまく使えば、テレビ番組はもっと見られるようになる

ネットを通じて視聴者のリアクションに直接触れられる

水道橋

田原さんって、ご自分でYouTubeに上がっているご自身が出演された番組を検索して見ることってあります?

田原

ええ。ただ自分で検索して見るというより、娘が探して見せてくれるんだけど。僕は自分が出た番組を自分から見返すって1度もやったことがないんです。僕はテレビディレクターだからね。キャスターとかタレントさんは自分の番組をあとから見返したりするけど、僕はしないんですよ。

水道橋

テレビマンって、番組は放送したらそれで終わり、って感覚があると思うんですが、自分が出た番組が世間にどのように影響を与えるか観測したくなったりはしませんか? 僕はそうなんですけど。

田原

僕が番組をやると、例えばBSだとツイッターでは600件から800件、多いと1000件くらいの反応が返ってくる。だからVTRは確認しないけど、ネットの反応に関しては気にしているかな。

水道橋

反応やら反響やら波風を立てるのが好きですもんね(笑)。無反応で、無難で、何も反響がないなんて嫌じゃないですか。

田原

例えば、このあいだちょっと入院していたんだけど、この時もツイッターでいっぱい反応が返ってきたんです。「ずっと点滴だったけど、重湯みたいなものを栄養源として口にして、久しぶりに食事をした」とツイッターに書いた。そうするとだいたいの人は「よかったね」と返してくれるんだけど、中には「田原なんて早く死ね」と返してくる人もいた。だから僕はその人に「残念ながらそう簡単には死なないんです」と返したわけ。僕はそういうのが好きなんでね(笑)。そうしたら「田原なんて早く死ね」って書いた人のツイッターが炎上したね。そういう意味では面白いね。無難じゃないからね。

水道橋

テレビに出ている人からすれば、視聴者の反応って以前だったら事務所というフィルターを通してから感じるもんだったと思うんです。でも最近は、もうツイッターで直接ガンガン視聴者のリアクションに触れられるじゃないですか。

田原総一朗×水道橋博士 特別対談(後編) インターネットをうまく使えば、テレビ番組はもっと見られるようになる

テレビ番組は多くの国民に知らせるためにやっている

―テレビ番組を動画サイトにアップロードして、番組の内容を引用しながら個人のblogやソーシャルメディアで話題にするといったことに関してはどうお考えですか?

田原

僕はどんどんやっていいと思う。だってもともとね、テレビ局が番組をオンエアするということは、多くの国民に知らせるためにやっているんですから。それはNHKだろうが民放だろうが変わらない。その番組が放送後にインターネットでも広まっていろいろな人が見ることができる。それはいいことじゃないですか。

水道橋

同じ批評にしたって、推測やその人が見た印象だけで何か書かれるよりは、批評対象の番組を正しく引用されたうえで批評されたほうが、正確でよい批評になると思います。

田原

ただ、引用ならいいけど歪曲はいけませんね。部分部分を切り取ってその人を不利な立場にするために一部を強調するとか。テレビのワイドショーがよくやる手法なんだけど。国会での討論なんかで、例えばこの前の総選挙の前、当時首相だった野田さんが行き詰まったところだけをバーンと大々的に放送したりした。それ以前にどういう議論が交わされて、どういうやり取りがあったうえでそうなった、という過程はどうでもよくて、ただそこだけを流す。ネットでもそういうことが起きなければいいけどね。

水道橋

国会中継って以前ならテレビでしか見られなかったけど、今はUstreamやニコニコ動画で流れていて、最初から最後まで見ることが可能ですよね。全てが見られる環境があったほうがいいに決まっているし、選択肢も多いほうがいい。ただテレビが国会討論を全て中継するっていうのは無理な話だから、そこを編集するのは当然。その編集が歪曲だったら抗議をすればいい。結局、抗議を恐れて普通の引用もしなくなるし、検証もしなくなる、そういう風に自粛することのほうが問題だと思いますね。引用のルールが明確にされてないのはよくないですね。

田原

さっき水道橋さんがおっしゃっていたように、もともとテレビで発言するというのは全世界でどこでも見られる可能性があるわけだ。だから当然その覚悟を承知のうえでテレビに出ないといけないんだけど、実はテレビのコメンテーターにはそういう覚悟がないまま出ている人もいる。非常に多いね。どうせ俺の言うことなんか政治家は聞いてないだろう、と。

水道橋

基本的に映像メディアって今簡単に作れるじゃないですか。番組を引用しながら、勝手に「今こういう問題が起きてます」と指摘する。そういうことができるチャンネルを勝手に立ち上げればいいんだ、と。それで問題提起すればいいんですから。

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