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田原総一朗×水道橋博士 特別対談(前編)インターネットをうまく使えば、テレビ番組はもっと見られるようになる

インターネットに流れるテレビ番組に関するニュースは「視聴率がとれない」「番組打ち切り」といった寂しい話題が多い昨今。そもそもテレビを持っていない若者も増えてきています。しかしソーシャルメディアに流れてくる話題を見れば、テレビ番組に関する話題が多いのも事実。違法に動画サイトにアップロードされたテレビ番組は、かなりの視聴数を稼いでいます。しかしそれらの動画はテレビ局によってすぐに消されてしまいます。インターネットを使ってテレビ番組が見られることは本当にダメなのか。インターネットを使ってテレビ番組が見られるようになるとどのようなことが起きるのか。田原総一朗さんと水道橋博士に語っていただきました。

田原総一朗(ジャーナリスト)

1934年4月15日生まれ、滋賀県出身。早稲田大学文学部卒。岩波映画を経て、東京12チャンネル(現:テレビ東京)に勤務。ディレクターとして製作した「ドキュメンタリー青春」シリーズでは取材対象者に肉薄する独特の取材手法で注目を浴びる。77年よりフリー のジャーナリストに。現在、評論家、ジャーナリスト、「朝まで生テレビ」の司会者として活躍中。

田原総一朗の公式サイト

水道橋博士(タレント)

1962年8月18日生まれ、岡山県出身。86年にビートたけしに弟子入りし、翌年、玉袋筋太郎とともにお笑いコンビ「浅草キッド」を結成する。テレビやラジオを中心に活躍の場を広げる一方で、ライターとしての才能を開花させ、雑誌にコラムやエッセイを執筆する。近著に電子書籍「藝人春秋」がある。現在、文藝春秋の週刊文春で「週刊藝人春秋」を連載中。

水道橋博士の「博士の悪童日記」

田原総一朗×水道橋博士 特別対談(前編) インターネットをうまく使えば、テレビ番組はもっと見られるようになる

表現や発言をより多くの人に見てもらう意義

水道橋

この対談はインターネットと著作権について考えていくウェブサイトに掲載するためのものでして、今回はテレビとインターネットというテーマで田原総一朗さんと対談をすることになりました。

田原

本題に入る前にちょっと聞きたい。なんで今著作権の問題なの?

水道橋

それはやっぱり著作権に関するルールが分かりにくいからだと思いますよ。

田原

分かりにくいと何が困るの?

―誰かが作った作品を使って何かをしようとするとき、その利用の仕方が適法か違法か、ユーザーが判断がつかないケースが増えているんです。

水道橋

テレビとインターネットというところで考えていくと、まずテレビ番組をインターネットで見られるようにすると利益がある、という感覚がいまひとつ理解されていないところがあると感じています。若い人たちからすれば「なに言ってるんだ」って感じだと思うんですけども。例えば実際今、インターネットにテレビ番組がユーザーによって勝手にアップロードされているという状況がありますよね。

田原

YouTubeのことね。

水道橋

代表的なのはYouTubeですよね。ニコニコ動画とかにもありますが。海外のサイトもあるし、やり方もいろいろあるみたいですね。これには著作権的な問題があるんですけど、この状況をテレビに出ている側の人間として、田原さんはどう思ってます?

田原

いいんじゃないですか?第一、日本のテレビ局はネットに上がっているテレビ番組をもう全然削除していないじゃない。著作権のことなんかもう諦めているんじゃないの?

水道橋

いや、諦めてもいないんですけどね。違法にアップロードされた動画を見つけたら削除要求を出して、二度と上がらないようにする。そういう努力をテレビ局はものすごくやっているんです。でも僕はそれに対して「僕が出た番組に関してはその努力をしないでください」と要請してるんです、テレビ局側に。

田原

それには全く賛成だね。

水道橋

もともと視聴するのにお金がかからないものを、リアルタイムの視聴者でない人たちが本来の放映時間とは違うタイミングで、無料で見ている。このこと自体には出演者としては何の抵抗もないんですよ。「インターネット配信だから別途課金してくれ。その分お金をよこしてくれ」という気持ちもありません。確かに全く問題がないわけではないと思うし、著作権は大事にすべきものだと思うけど、それ以上に自分が表現していることや発言していることをより多くの人に見てもらうというほうが意義が大きいと思うんです。

田原

自分のやったことがより多くの人に見られたほうがいいわけだよね。

水道橋

例えば大阪で放送されているやしきたかじんさんの番組は、東京では放映されていないけどネットでは全部見られるようになっているわけです。テレビ局が黙認しているんですよね。そうなると「大阪でしか見られない番組だけど、ネットで見ておこう」となる。その結果「たかじんの番組は治外法権だ」と評判を高めているんです。

田原

テレビ局の戦略なわけだ。

水道橋

「こういう番組をやっているんですよ」と知らしめると考えたほうが考え方として正しいし。確かに一時的にはテレビで見る視聴者は減りますよ。YouTubeで見ればいいと思う人が多ければ。でもネットを使ってタダで見せたほうが知名度が上がるし、最終的には視聴者が増えるかもしれない。終わったものはゼロ円なんです。ゼロ円で見てもらって「この番組は面白いね」と思ってもらって次の価値を生んでいくほうが正しいと思うんですよ。その概念がわからない人が多いんだよな……。

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