COLABORAジャーナル

ネット時代の著作権を考える―COLABORAが目指すものとは?

オープン化が社会や組織をよくする可能性―国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

―では続いて国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの渡辺さん、お願いします。

渡辺

僕が所属する国際大学グローバル・コミュニケーション・センター、通称GLOCOMは国際大学という大学院大学に付属する研究機関です。GLOCOMではITや通信に関わる政策や産業動向、企業のグローバル戦略やイノベーション推進策などの研究をしています。GLOCOMはインターネットの重要性にいち早く注目した研究所でもあり、そのせいもあって「オープンであること」を重視している人が多い所です。ただ、大学の研究機関はだいたいそうですが、研究機関そのものがなにか1つの主張をしているということはなくて、所属する研究員は各々の主張があるし、オープン化のあり方ひとつとっても意見がぶつかることもあります。

とはいえ非常に多くの分野で、ITや通信のポテンシャルを活かすためには、やはり従来よりももっとオープンな社会、オープンな制度、そしてオープンな組織が有効なことが多いんですよね。例えば政府や自治体が持っているデータや情報をもっと公開して、自由に分析させたら、どんな政策が有効なのかいい知恵を出してくれる人がいるかも知れない。政府が対処し切れない問題や、気づいてすらいない問題を解決するべく動いてくれる人が現れるかも知れない。それでは、政府は、このようなポテンシャルを実現するために、政府の情報を広く公開し、透明性を高め、外部の人の知恵を借りたり、これだけ便利に使えるネットを活用して意見を交換したり、議論をして、それを行政に活かせるでしょうか?このオープンデータやオープンガバメントと呼ばれるムーブメントを日本で進めるための活動には最近GLOCOMの研究員がさまざまな形で携わっています。

野口

このサイト、COLABORAで取り上げる著作権法の世界でも、オープン性はキーポイントになるんですよね?

渡辺

著作権についても、もっとオープンにしてみたらどうなるだろう、と考えてみると面白いですね。たとえば経済学の分野では、無断コピーがネットで流通すると、コピーされた作品の売り上げにどう影響するかを、データに基づいて分析した研究がいくつかあります。調べてみると、売り上げに影響がなかったり、むしろプラスになるという傾向が見つかることも多いんです。それなら、作者やコンテンツ事業者は、自分たちの作品を厳密に管理するよりも、自由に流通させた方がいいかもしれない。似たような考え方はアマチュア・クリエイターの中には少なくないと思うんです。自分のとった写真や自分が音楽を演奏している動画が人から人へ転送されて広がったらむしろ嬉しい、自分の作品をお金儲けのタネにするのなら正当な対価を求めるけれども、楽しみでやっていることは止め立てしない、とか。著作権でも、他の分野でも、物事を自分だけ、特定少数の人だけで決めるのではなく、より広い層に参加してもらって決めたり、多くの人に決定権を委ねるようにするのがオープン化の典型です。コンテンツもそんな風にオープン化する動きがいろんなところで始まってきているといえます。

小寺

でも、法律改正はむしろ逆向きですね。ネットでの無断流通をより広い範囲で犯罪にしてきている。

渡辺

その通りですね。COLABORAを通して実際の事例を取材しながら、著作権のオープン化の可能性をさぐっていければよいなと考えています。

小寺

渡辺さんはクリエイティブ・コモンズにも関わっているんですよね。

渡辺

ええ。実は野口さんと一緒にクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの常務理事もやっています。これもまた、著作権のオープン化の取り組みのひとつですよね。

小寺

渡辺さんがオープンな情報の重要さを考えるきっかけになったものってなんだったんですか?

渡辺

2000年代半ばにウィキペディアに関わったことが大きかったですね。ウィキペディアの一見無謀にも見える「誰でも編集できる百科事典」が、しかも運営体制までサイトのユーザーにほとんど任せ切りという方式なのに、実際にやってみるとここまでうまく行くものなのか、というのを目の当たりにして驚いたし、興奮しました。もちろん完璧ではないけど、思ったよりずっと素晴らしい出来で、まだ伸びるなと思いましたーそれは裏を返せば、自分はオープンな仕組みが持つポテンシャルを過小評価していると気づかされたということでもあります。

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