COLABORAジャーナル

ネット時代の著作権を考える―COLABORAが目指すものとは?

私たちはコンテンツを生み出すことで社会を豊かに発展させてきました。モノが生み出されるということは、それを作った誰かがいるということ。そのコンテンツを生み出す人たちが安心してコンテンツを生み出し続けることができるように「著作権」というしくみができました。そして現代。たくさんの人たちがインターネットを使うようになり、そこからもたくさんのモノが生み出されるようになりました。そんなみんなが作り手になる時代の著作権のありかたを考えていくために「Copyright Laboratory (COLABORA)」というウェブサイトが始まりました。ただ「みんなが作り手になる時代の著作権のありかた」って一体どんなものなんでしょうか? 今回はCOLABORAを主宰するクリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)、そして一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)のみなさんにお話をうかがいました。

ネット時代の著作権を考える―COLABORAが目指すものとは?

情報の流れを自由にして新たな創造を生み出す仕組み―クリエイティブ・コモンズ・ジャパン

―「Copyright Laboratory」、略して「COLABORA」が立ち上がりました。このサイトは日頃からインターネットユーザーやクリエイターの立場から著作権期制度に提言などを行なっている3つの民間組織によって運営されるそうですね。まずはみなさんの自己紹介も兼ねて、各々の組織のミッションをお聞かせください。ではクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの野口さんからお願いします。

野口

私は普段は弁護士として著作権や特許などの「知的財産権法」やインターネット関連の法律に関する分野のアドバイスを行なっています。そしてクリエイティブ・コモンズ・ジャパンという組織では常務理事を務めています。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンとは何をしているところか?を一言で言うと、作者の意思に基づいて、作品を自由に利用できるようにする仕組みを提供することで、作品の流通を促進し、クリエイティブな社会を支えていこう!という活動です。そのための手段としてクリエイティブ・コモンズ・ライセンスというツールを提供しています。興味のある方は、あとでHP(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)を見てみてください。

小寺

僕もジャーナリストの津田大介さんと一緒に出した『CONTENT'S FUTURE』という本にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつけたんです。津田さんは最近の著書にはほとんどクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつけてますね。

野口

そうですね。津田さんのようにツイッターなどでも情報発信が活発で、自分の発信することを広く知ってほしい!という人にはとても向いているツールだと思います。
現在ではコンピュータやインターネットを駆使して情報をどんどん発信できるようになりました。それによって一人が上げた声に大勢の人が共感することができたり、情報をもとにいろいろな出会いが生まれるようになり、その出会いの中で発生した化学変化によってイノベーションが生まれるようになってきました。このイノベーションを起こすためには自由な情報の流通が重要です。ところが、このような情報流通やイノベーションにとって、著作権法は、頭の痛い問題なんです。

渡辺

ウィキペディアは、まさにその典型例ですね。

野口

そうですね。ウィキペディアのように、会ったこともない多くの人が自分の知識を書き込んでいくことで、人々の英知をひとところに結集し、百科事典を作ってしまうというのは、まさにインターネットならではの化学反応です。この読者の方も、ウィキペディアに一度は教えてもらったことがあるのではないでしょうか。

ところが、ウィキペディアは、著作権法的には、とてもややこしい事態なんです。ウィキペディアは、「ここに投稿したものはみんなで書き換えて、もっとよくして欲しい」というものを持ち寄る場。ところが、著作権法の大原則は「勝手に他人の著作物をコピーしたり、改変してはだめ」というものなのです。この二つのベクトルが完全に逆を向いている。そのままでは、ウィキペディアは違法か?という問題になってしまいます。
こういう風に、インターネット上の文化と著作権法のルールがそのままではうまくかみ合わない部分はたくさん出てきています。その原因は、現在の著作権法の基本的な枠組みが19世紀末、いまから120年以上前にできたことにあるのです。当然、著作権法はコンピュータやインターネットの登場を想定して書かれているものではないので、コピーや送信を簡単にする今のデジタル技術と根本的な矛盾を抱えているのです。

このままでは、せっかくのデジタル技術やインターネットで広がってきたポテンシャルが社会で十分生かされないで終わってしまう。それではもったいない。むしろ、情報技術の発展に合わせた形で著作権法を変えていくべきではないか、と考えた人たちがいました。その先駆者の一人にローレンス・レッシグというアメリカの法学者がいます。レッシグは著作権法を変えていくために裁判所に訴えたり、沢山の人に自分の問題意識を訴えかけたりしました。しかし、著作権法を変えるということは非常に難しいことでした。

著作権法を根本から変えることは難しい。しかし情報の流通を促進したい。そのためには、情報を発信するひとが「これは自由に使っていいですよ」というマークを発信した情報につけるようにして、著作権法のルールをいわば上書きすればよい。そして、そういう自由な情報が世の中にどんどん増えていけばよい。レッシグたちはこのように考えて、自由な情報流通の仕組みとしてクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを2001年に創設したんです。

私はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスがアメリカで産声を上げたときに、その場に居合わせることができました。そして、レッシグたちの熱い思いに大きな影響を受けて、2005年から日本でのクリエイティブ・コモンズの活動に本格的に参加しています。

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