岡部学長インタビュー(後編) ネット活用が拓く教育の未来
留学生向けキラーコンテンツとしての日本の文化資産
- 渡辺
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留学生をどれだけ引きつけられるかは、これからの大学の経営にとって重要です。オープン教材や無料で授業を提供することは、すごくいい宣伝になるのではないですか。
- 岡部
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留学生は、日本で学びたい、日本のことを学びたい、という魅力がなければ来てくれない。かつての高度成長時代には、それがすごくあったけれど、留学生を受け入れるシステムができていなかった。留学生30万人計画を言い出した頃には、すでに日本は凋落していて、いまや科学技術に関してはお手本にならないと見られている。長い伝統を持った日本の文化・歴史に関心を持っている人はいますが。
- 渡辺
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日本の映画、アニメ、漫画、ゲームは、産業政策としても重要だし、文化外交の資産としても使えるのではないかと多くの人が注目しています。しかし、そういうものこそ、著作権が切れていませんから、簡単には利用できない。
- 岡部
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それは私も感じます。もう少し細かい調整をしないといけない。一定のルールですべてを縛るのではなく、海外に日本の文化を広めるためには大目に見るとか、使い方によって匙加減が必要だと思います。著作権法がそういう匙加減を欠いているので、権利を持っている人たちも、なかなか緩めてくれない。
- 渡辺
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交渉に時間と手間がかかって大変ですね。
- 渡辺
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たとえばEUでは、著作権の切れた古い文化財や権利者のはっきりしないものを中心にデジタルアーカイブを進めていて、その中から教材に限らず、いろいろなものにどんどん再利用していこうという動きになっています。日本でも国立国会図書館がそういうアーカイブづくりを始めていますが、そういう動きが大きくなっていけば、教材の問題も改善していくと思います。
- 岡部
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その点はどうでしょうか。道端のお地蔵さんの写真でも、研究の世界に閉じているうちはいいのですが、オープンにする、ネットに上げる、となった途端に「いや、困る」と言い出す人が出てきて……
- 渡辺
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公益に資するという考えが薄いのは困りますね。
- 岡部
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「学生さんの教育に使うのだからいいでしょう」と言っても通らない。
- 渡辺
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ネットで見たことで、実物を見に行きたくなる人がいるかもしれない、そちらが大きいかも知れない、という考え方もあると思いますが。
- 岡部
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学生時代にネットで見て、将来卒業してから、お金を払ってでも実物を見に行くかもしれない。そういう発想が日本は薄いですね。アメリカでは、学生が使う基本的なソフトウェアを、ただみたいな料金で使えるようにしている例があります。彼らが卒業すると、会社でも同じソフトを使いたくなるので、これは投資だと考えられています。日本では学生相手であっても基本的に売る、少しは安くしますが。
- 渡辺
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公益と私益のバランスに欠けているだけでなくて、長期的な視点から収益を見るセンスも足りないということですかね。
- 渡辺
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大学についても戦略的な視点からの政策がもっとあってもいいですね。日本の存在感を上げるためには授業や教材のネット上での発信が必要で、そのために予算を付けて攻めていこうというような。
- 岡部
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おっしゃる通りです。したがって経費があまりかからないようにやります。例えば、放送授業を学生向けにインターネットに流すのも、いきなり全部を一斉にやろうとすると全面的に拒否されかねないので、最初は私の講義だけ、次は新規の講義を全部というように少しずつやっています。そういう実績を2008年から積み重ねていって、来年には100パーセントになります。最近、オンライン授業を始めましょうということで、1年間で数科目、試しに学長裁量でつくることになりました。これが効果があるということになれば、だんだん増やしていきたいと考えています。お役所も反対、先生方も反対する人がいるとなると、日本ではそういう形でしかできない。
- 渡辺
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そういう環境でも、キャッチアップ型のアプローチであれば可能かも知れませんね。米国ではオンライン授業の活用によって実績が出ているとわかれば、日本でも成功事例を模倣する取り組みとしてやりやすい。ただ、それは後追いだけで、自ら実験して、フロンティアを切り拓くことができない。